世界遺産に登録されている地のうち、30件以上の名称に「旧市街」という文字がついているのをご存知ですか?
「旧市街」というのは、単独の建物ではなく、城壁や大通り、海などで囲われた、昔からの街並み一帯を登録する際に使用されている名称。ちなみに旧市街のうちの一部や、旧市街と新市街にまたがる街並みが登録される場合は、「歴史地区」とつくことが多いようです。
今回はittaライターの旅のしおりの中から、世界遺産に登録されている、各国の「旧市街」をご紹介! 古き良き街の雰囲気を味わえる、貴重なスポットです。
ドゥブロヴニク旧市街(クロアチア)
写真:「【クロアチア】麗しのドゥブロヴニク旧市街」(ライター:BLUE)より
「ドゥブロヴニク旧市街」は「アドリア海の真珠」と称されるほど美しい街。約2kmに及ぶ城壁は、外側を紺碧の海、内側をオレンジ屋根の家々に彩られています。
1991年にはユーゴスラビア内戦によって街の70%が破壊されましたが、終戦後に市民自らの手によって修復・再建。ジブリ作品『魔女の宅急便』『紅の豚』のモデルと言われていることでも有名で、街の路地に迷い込むと、まるで映画のような世界が広がっています。
ベルン旧市街(スイス)
写真:「【スイス】美しい世界遺産の街! 首都ベルンで絶対に行きたい観光スポット6選」(ライター:Saho)より
湾曲するアーレ川に囲まれた「ベルン旧市街」。赤煉瓦の屋根が連なり、エメラルドグリーンの川が輝く美しい街です。ベルンという地名は、ドイツ語の「熊(bär)」に由来するそう。「ベーレンパルク(熊公園)」では、街のシンボルである熊たちが飼育されています。
また、ここは昔から、アルプスの湧き水が豊富な地。街中にある噴水は注意書きがない限り飲み水になっており、ペットボトルに給水する地元の方も珍しくありません。
ベッリンツォーナ旧市街の3つの城と防壁・城壁群(スイス)
写真:「【スイス】鉄道旅のススメ ~イタリア語圏の南スイス、ティチーノ州の街巡り」(ライター:BLUE)より
中世の「ベッリンツォーナ旧市街」は、交通の要所であり、重要な軍事上の戦略拠点。13世紀から15世紀にかけて3つの城が築城され、城壁に囲まれた難攻不落の要塞都市として栄えました。
3つの中で一番大きなお城は、2つの塔がそびえる「カステルグランデ」。鮮やかな芝生が敷き詰められた中庭にはレストランがあり、現在は市民の憩いの場となっています。
タリン旧市街(エストニア)
写真:「【エストニア共和国】メルヘン度高め!おとぎの国タリンへ迷い込む旅」(ライター:BLUE)より
交易の要所として栄えた「タリン旧市街」は、商人や職人たちの暮らした下町と、貴族が暮らした山の手のエリアに分かれています。
「石になったオレフ」「トーマスおじいさん」など、現地で語り継がれる物語にちなんだ名称が各所につけられており、お話を知っていると、より楽しむことができる街なんです。ヨーロッパ最古の薬局とされる市議会薬局では、「長寿の薬」や「失恋の薬」も処方してくれるんだとか!
フェズ旧市街(モロッコ)
写真:「【モロッコ】都市と砂漠、動と静を感じるモロッコ」(ライター:BLUE)より
「フェズ旧市街」は、外敵の侵入を防ぐための複雑な街並みから「世界一の迷宮都市」とも呼ばれています。車の入れない場所が多いため、今でも物流の手段として、ロバやラバが働いているのだそう!
13世紀頃からはモスクや世界最古のマドラサ(イスラーム世界の高等教育機関)が造られ、アラブ諸国から多くの留学生を迎え入れて、芸術や学問の中心として繁栄しました。現在は手工業が盛んで、なめし革染色職人たちの作業場「タンネリ」も、観光スポットとなっています。
マラケシュ旧市街(モロッコ)
写真:「【モロッコ】ジャマ・エル・フナ広場を楽しもうinマラケシュ」(ライター:BLUE)より
砂漠の遊牧民族が集った「マラケシュ旧市街」は、サハラ交易や地中海交易の拠点として栄えた「オアシス都市」。歩き疲れた旅人たちを、緑あふれる噴水庭園で迎えてきました。
迷路のようなスーク(市場)には色彩豊かな雑貨がズラリ! 旧市街の中心にあるジャマ・エル・フナ広場も、夜になると食べ物の屋台がそこらじゅうに現れ、大道芸や音楽の生演奏などで一気に賑わいます。
エッサウィラのメディナ(モロッコ)
写真:「【モロッコ】 個性的な宿「リヤド」に泊まろう!RIAD宿泊体験記」(ライター:BLUE)より
港町にある「エッサウィラのメディナ」は、世界各地の文化が混ざりあった場所。純白の家々が並ぶ景観が美しく、多くのモロッコ人が新婚旅行で訪れます。
街は通りごとに業種で区分されていたり、派手なイラストが描かれていたりとユニーク。多くのミュージシャンに愛されてきたことから、「音楽の街」としても知られています。年に一度の音楽祭「グナワ・フェスティバル」は、世界中から人々が集まるイベント!
チュニス旧市街(チュニジア)
写真:「もう治安は悪くない! 意外と見どころ満載、チュニジアの安全な観光スポット10選」(ライター:SHO‐KUN)より
チュニジアの首都であり、アフリカ有数の大都市に位置する「チュニス旧市街」。もともとは城壁に囲まれていましたが、現在は入口となる「フランス門」のほか、ところどころに門や壁の一部だけが残っています。
敷地内には居住地だけでなく、お土産屋やカフェ、市民が日用品を揃えるためのスーク(市場)が広がっており、アラブ世界で最も美しい旧市街のひとつと言われる場所です。
スース旧市街(チュニジア)
写真:「もう治安は悪くない! 意外と見どころ満載、チュニジアの安全な観光スポット10選」(ライター:SHO‐KUN)より
チュニジア中部、地中海に面するスースは、ビーチリゾートとしても人気の大都市。城壁に囲まれた「スース旧市街」は9世紀にフェニキア人によって造られたもので、高さ38mの「リバトの塔」から、町や港を監視していました。
ポエニ戦争の際に、同じくフェニキア人が造ったカルタゴの街は滅亡。ここだけは古代ローマ帝国と同盟を結んでいたことで破壊を逃れ、当時の貴重な姿を残しているのです。
オールド・ハバナとその要塞群(キューバ)
写真:「【キューバ】今が行き時?!オールドハバナの賑わいとキューバンカクテル」(ライター:BLUE)より
ハバナ湾に面した地区「オールド・ハバナ」は、様々な時代のきらびやかな建築が並ぶ旧市街。スペインの植民地貿易の中心として、繁栄していきました。2015年にアメリカとの国交を回復した後は、キューバへの渡航者が劇的に増加。世界遺産に登録されている旧市街地区は、景観保全のために改修工事が進んでいます。
街の中心地から数ブロック離れた住宅エリアは、人々の生活が垣間見られ、陽気な雰囲気。地元の人々の歌や踊りに触れ、より濃く「オールド・ハバナ」を感じることができます。
ホイアンの古い町並み(ベトナム)
写真:「【ベトナム】魅力いっぱいの世界遺産のまち、ホイアン」(ライター:あげぱん)より
ベトナム中央部に位置する「ホイアン」は、約180年前の街並みが残る小さな旧市街。国際都市として中国やヨーロッパ諸国との貿易も盛んだったため、世界各国の建築様式が混在しています。
16世紀には1,000人以上の日本人が暮らしていたとされ、日本人の建造した街や「伊勢うどん」がルーツの食べ物も存在。昼間は落ち着いた雰囲気ですが、夕方から夜にかけては美しいランタンの光が灯り、幻想的なムードを味わうことができる街です。
以上、世界遺産に登録されている各国の「旧市街」をご紹介しました! 同じ都市でも、周辺とはまた違った雰囲気を味わえるのが「旧市街」の魅力。そこで暮らす人々の歴史を、肌で感じに訪れてみてはいかがでしょう。