北アフリカ随一と言われた治安の良さで観光客を魅了してきたチュニジアでしたが、2011年の革命以降、政情不安やISからの帰国戦士による問題により、ここ数年は治安が非常に不安定でした。
しかし、最近になってようやく、外務省海外安全ホームページによる、チュニジアの危険情報が地中海沿岸部にある観光スポットを中心にレベル2(不要不急の渡航はやめてください)からレベル1(十分注意してください)に引き下がりました。
というわけで、僕が住んでいるドイツのケルンからEurowingsの直行便がチュニジア中部のモナスティールまであったので、早速行ってきました!
この記事では危険情報レベル1に指定されている地域にある、チュニジアのメジャーな観光スポットについて紹介します。
●チュニス市内●
人口108万人を抱えるチュニジア最大の都市、チュニスは北アフリカを代表する大都市のひとつです。世界遺産に登録されている旧市街だけでなく、フランス植民地時代に造られたヨーロッパ風の街並みが共存する大都市です。
1:メディナ(旧市街)
写真中央に移っているのがメディナへの入り口、バーブ・ブハル(フランス門)です。
チュニスのメディナはアラブ世界で最も美しいメディナのひとつだと言われており、メディナの中には土産物屋カフェだけでなく、市民が日用品を揃えるためのスーク(市場)が広がっています。
アラブ系の国でよく見かけますが、メディナ内のスークには伝統的な革製品や金物細工を扱うエリアもあれば、明らかに偽物に見えるチープな靴屋や服屋もたくさんあります。
メディナのほぼ中心部に位置するのがグランド・モスク(ジャマー・ジトゥーナ)です。後で紹介する、カイルアンのグランド・モスクの次に古く、9世紀半ばに完成したそうです。
2:ハビブ・ブルギバ通りとチュニス首都劇場
チュニスのメインストリートが、このハビブ・ブルギバ通りです。ハビブ・ブルギバとはチュニジア初代大統領の名で、通りの両サイドにはたくさんのカフェやレストラン、銀行、ホテルなどがあります。
ハビブ・ブルギバ通りには100mおきくらいに、大勢の武装した警察官がパトロールをしているので、街歩きも安心です。
通りの西端にはフランス保護領時代に建てられた西洋式の大きな劇場があります。
僕が行ったときは演劇をやっていると聞いたので当日券を買って中に入ってみましたが、係員の人たちにほとんど英語が通じなかったせいか、演劇ではなく、チュニジア人のおじさんの講演会でした(笑)
僕は全くアラビア語がわからない上に、講演会は2時間もあったので疲れてしまいましたが、劇場の中を見学できたのは良かったです。
3:バルドー国立博物館
チュニス中心部から西へ5キロ、メトロ4号線で20分ほど行ったところにあるのが、「チュニジアのルーブル」と言われるバルドー国立博物館です。ローマ時代のモザイク画のコレクションが大変有名です。
また、ここは2015年に日本人観光客も犠牲になったテロ事件が起こった悲しい場所でもあります。
テロから3年が経ち、敷地内に入るのに厳しめのセキュリティチェックがありましたが、ここに武装した男たちが襲撃したとは想像できないほど落ち着いた壮大な雰囲気のある博物館でした。
●チュニス近郊●
4:カルタゴ
チュニス新市街の東側にあるチュニス・マリン駅から郊外電車TGMで30分ほど。
海洋貿易や農業で繁栄していましたが、かのローマ帝国と3度にわたるポエニ戦争の末に敗れた、チュニジア史上最も有名な観光地です。
カルタゴにある観光スポットは共通チケットになっており、10ディナール(約450円)で全ての遺跡に入場することができます。
10か所ある遺跡のうち、特に必見なのは上の写真にある、アントニヌスの共同浴場です。チュニス湾を臨む雄大な景色は今でも良いですが、当時はもっと圧巻だったのでしょう。
アントニヌスの共同浴場から徒歩10分ほどのところにあるのが、このローマ人の住居跡です。小高い丘の上にあり、近くには大統領官邸もあります。
5:シディ・ブ・サイド
日本ではあまり知られていないですが、ヨーロッパ人にとってチュニジアはバカンスを楽しむリゾート地として有名です。カルタゴのような遺跡だけでなく、白と青を基調としたおしゃれな街並みもあります。
シディ・ブ・サイドでおそらく最も有名な眺めが見られる「カフェ・シディ・シャバーン」。コーヒー1杯の値段がチュニジアの物価を考えるとかなり高めの7ディナール(約315円)もします!
僕は夕方に行きましたが、かなり混雑しており、午前中の早い時間に行く方が込み具合も日の当たり方も良いかもしれません。
●スース●
スースはチュニスから電車で2時間ほどのところにある同国3番目の大都市で世界遺産に登録されている旧市街をはじめ、ビーチリゾートもある、チュニジアで絶対に訪れるべき街のひとつです。
この街を拠点にすると後で紹介するエル・ジェムやカイルアンなど、ほかの世界遺産がある街にアクセスできます。
6:グランド・モスクとリバト
9世紀に建てられ、チュニジアで唯一ミナレット(塔)を持たないモスクとして有名です。
写真はそばにあるリバトの塔から撮ったモスクの全体像と港です。
8世紀に建てられた旧市街で最も古い建物です。地上38mの高さの塔に登ればスースの絶景パノラマをみることができます。
7:スース考古学博物館
スースの項の冒頭に載せたのがこの考古学博物館です。チュニスにあるバルドー国立博物館の次に多いモザイクコレクションがあります。
旧市街の南側にあり、歩いても15分ほどのところにあるので途中にあるスークを物色しながら行ってみると良いでしょう。
●チュニジア中部●
前述のスースもチュニジア中部にありますが、スース以外にも気軽に訪れることができる観光スポットがたくさんあります。
8:モナスティール
ヨーロッパ各地からの直行便が就航する空港があり、初代大統領ハビブ・ブルギバの生誕の地でもあります。空港からは循環バスやメトロが走っており、スースまでは20分ほどの距離にあるので便利でした。
写真はハビブ・ブルギバの霊廟。無料で見学することができ、中の装飾は圧巻でした。チュニジア独立当時の写真やブルギバの私物などが展示されています。
海岸沿いにある要塞リバトは博物館が併設されており、塔の上に登るとモナスティール市内を一望できます。スースのリバトよりも大きく、見ごたえ十分でした。
9:エル・ジェム
スースからルアージュという乗り合いバスで約1時間。世界遺産に登録されている円形競技場があります。
チュニジアには25か所ほど円形競技場があるそうですが、そのなかでも最も保存状態が良いそうです。ローマのコロセウムはもちろんですが、世界の円形競技場の中でも3つの指に入るそうです。
僕はイタリアのヴェローナのコロセウムも見たことがありますが、少なくともヴェローナより満足度が高かったです。
10:カイルアン(ケロアン)
こちらもスースからルアージュでアクセスでき、「古都カイルアン」として世界遺産に登録されています。アグラブ朝やファーティマ朝といったアラブ系王朝の都でした。
写真はカイルアンのグランド・モスク。そばにあるお土産屋の屋上から撮影できます。
カイルアンはイスラム教第4の聖地とされています。第4の聖地はシリアのダマスカスだと思っていましたが、諸説あるようです。
カイルアンのメディナのほぼ中心には「ビル・バルータ」という、イスラム教の聖地メッカに通じていると言われる伝説の井戸があります。
カフェも併設しており、係の人に1ディナールを渡せば、ラクダが井戸の周りを歩いて聖なる水を汲み上げてくれます。その水を試飲することも可能なのですが、ちょっと不安だったので飲むまではやめておきました(笑)
●注意点&まとめ●
この記事で取り上げた街を中心に、外務省海外安全ホームページによる危険情報のレベルは1に下がったものの、依然として南部の砂漠地帯やリビアとアルジェリアの国境付近にはレベル2と3が発令されています。情勢は流動的になる場合がありますので、渡航の際は必ず、最新の情報を手に入れるようにしてください。
僕が訪問した時は首都のチュニスをはじめ、観光地では大勢の警察官がパトロールしているため、治安に関しては問題ない様子でした。途上国で心配になる、野良犬もおらず、安心して観光できます。
とはいえ、チュニス市内でも夜遅くまで空いている店が少なく、20-21時以降は驚くほど人通りが少なくなります。特にメディナ内は街灯も少ないため、強盗やひったくりなどの被害も出ているそうです。夜間の一人歩きには十分気をつけましょう。
英語の通用度はかなり低く、フランス語かアラビア語ができなければ難易度は高いかもしれませんが、最低限の注意さえ払えば治安も良く、ご飯も美味しく、人も温かい国です。
写真にあるようにメディナの中にはチュニジア風のフォトジェニックなカフェも多いので、ぶらぶらするだけでも楽しいところが多いです。
商人の押しもそこまで強くなく、うさん臭さも控えめで、何よりもそれほどウザくない国民性だったので個人的にはモロッコよりも満足度は高かったです(笑)
北アフリカに行かれる際は、最近流行りのモロッコよりもチュニジアの方を僕は強くおすすめします!