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2021-03-24

【後編】1日限りの冒険を。三河湾の離島「佐久島」へ一人自転車旅


前編はこちら

>>【前編】懐かしさを求めて。三河湾の離島「佐久島」へ一人自転車旅



「佐久島の秘密基地/アポロ」をあとにしたら、この島で本当に一番東端の場所「新谷海岸」へと向かう。

オンロードは途中まで。そこから木々が生い茂る小道を走っていくと、突如美しい海岸へと辿り着いた。

ふかふかの砂浜と、限りなく青い海。同じく三河湾内の篠島や日間賀島、渥美半島そして伊勢志摩方面が一望できる。

まるで瀬戸内の多島美を彷彿とさせる景色が広がっていた。


加えて、この島独特の侵食の台地なのだろうか?
荒々しさと柔らかさ、そして美しさが共存する場所。

少し過ごしただけなのに、すっかりお気に入りの場所になった。

島旅の道中には、どの島でも必ずこうした穴場があり、それを探索するのが楽しいもの。個人的に、島って旅の可能性の塊な気がする。一つとして同じような島はなく、島は狭くても、とても濃いからね。


そして、町へと戻ってきた。

島独自の細い小道を、ごはん屋の看板に釣られて進んでいくと...


雰囲気ある古民家が佇んでいた。うん!お昼はここにしよう!!

店内に入ると、温かそうなおばあちゃんが笑顔で迎えてくれて、ホッと一息。


佐久島の名物「大アサリ丼定食」を頂くことに。4種のお刺身もついていて、これでもか!?というほど海の幸を堪能できる。自転車で走り回って、お腹ペコペコだから嬉しい。

大アサリの弾力と、ほのかな磯の風味。それがトロトロの卵とじとマッチングして大変美味だった。ご馳走様でした。


さて、次は佐久島から繋がっている「大島」へと自転車を走らせる。

「大島へと続く一本道」。ここは強く印象に残っている。

小学生の頃、歩いたことがあるのだが、まだ小さかった私にとって、あの小島まで行くこと自体が、まるで冒険のように感じられた。あれから20年近く経つのに、確かに胸の高鳴りを覚えているから不思議だ!

佐久島の特徴的な場所の一つ。


島へと辿り着くと

この風景を見て一気に懐かしくなる。「海釣りセンター」だ!
そう言えば、佐久島で一番記憶に残っているのは、父と弟と釣りをした思い出だった。


当時は、下が透けているこの場所を「怖い!」と思ったこと、その恐怖を乗り越えて釣りを楽しんだことを思い出す。この場所はあの時から何も変わっていなかった。

どこかホッとすると同時に、自分にもこれから家族ができたら、ぜひ子供と釣りをしに行きたいなぁと感じた。親の背を見て子は育つもの。


そして大島にも一つのアートが出来上がっていた。

その名も『佐久島のお庭』。


佐久島にある4つの山を表現した造形物を中心に、この区画にミニ佐久島と呼ぶべき空間が作られている。

様々な色がちりばめられていて綺麗で、どこか不思議な雰囲気のあるこの場所。


水仙が咲き始めていて、しばしその可愛らしい花と、その甘い匂いに癒された。
春先には梅林となるようで、ぜひその際にも見に行ってみたいところ。

そして自転車をまた西港方面へ走らせる!これで島は概ね一周は完了だ。


途中、「ノン」と「ビリー」というヤギに癒されたり。(「のんびり〜」ね。)


風に合わせて変わる、カモメの駐車場へと立ち寄ったり。


黒壁の集落を通り抜ける、など。

細かいけれど島の雰囲気を感じられたり、見るべき場所は多い!自転車を巡れば、敏感なアンテナでキャッチできる。


そして最後に向かうのは、西港近くにあるアート作品で、佐久島で一番有名な「おひるねハウス」。

綺麗な浜にポツンと佇んでいて、シンプルな造形が周囲の風景とコントラストを作っている。はしごを上り、寝転んだ先には海という、海への奥行きも楽しめる作品だ。

人が少なくて、ゆっくりと楽しむことができた。吹き抜ける海風が寒すぎて、お昼寝どころじゃなかったのは、ここだけの話。


島に遊びに来ていた女子4人と写真を撮り合いっこ!なんと大阪からのメンバーもおり、佐久島で集合したとのこと。

本当に楽しそう。かつ「社会人になっても一緒に出かけられる仲間って大切だよなぁ~」
と改めて感じた。今の私にも言えることだ!

そうして少し、心がほんわかした私は、行きに降りた西港へ戻ってきた。

黒壁と漁船が作る独特の島の風景がいい。


ふと、弁天サロンという場所へと立ち寄る!ここは島の休憩場所といった感じで、喋り好きなおばあちゃんが迎えてくれた。

丁度帰りのフェリーの便の関係で、まだまだ時間があったから、思わず長話。

昔・今の島の話、ヌートリアが島に増えた!話など、何気ないローカルな会話を楽しむ。こういう取り留めのない無い時間が、島旅のよさだったり・・・

次のフェリーまでの多くの時間を過ごさせてもらった。寒い冬の日没後、温かいお茶とお菓子をいただけたこともありがたかった。

そうして17時ごろの高速船に乗って、島をあとに。久しぶりに訪れた佐久島。あの頃の面影と島の情緒を残しつつも、新たに変化を迎えている側面も楽しむことができた。


私の島旅の原点と言える場所。

数々の思い出とともに、この島がいつまでも穏やかなまま残っていてほしい。懐かしさと一緒に、新たな気づきも多い、充実した日帰りの冒険となった。

訪れたことのない場所も良いけれど、昔の記憶をたどる旅もいい。そんなことにふと思いを馳せた一日だった。



このしおりのライター

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