昨年1月にリニューアルオープンしたばかりの「アーティゾン美術館(旧ブリヂストン美術館)」。コレクションもさることながら建物自体も美しく、個人的に一番好きな美術館です。
そんなアーティゾン美術館で現在、『STEPS AHEAD: Recent Acquisitions』という展覧会が開催されていたので、行ってきました(会期:2021年2月13日〜9月5日)。
日時指定入場制なので快適に安心に美術鑑賞できる!
今の時期に室内の美術館に行くのは少しリスキーかなと思いましたが、アーティゾン美術館は日時指定入場制なので、とにかく人が少ない!私は休日に訪れたのですが、他の観賞者はちらほらいる程度で他人と1m以上接近することはありませんでした。
訪れる日時が決まったらインターネットで事前にチケットを購入しておきましょう!当日チケットは、ウェブ予約チケットが完売していない場合のみ美術館窓口でも購入することができます。完売していると入館できないので要注意!
予約可能な入場時間枠は、
①10:00〜11:30
②12:00〜13:30
③14:00〜15:30
④16:00〜17:30
指定の時間枠内であれば、いつでも入館可能。入れ替え制ではないので、一度入館したら閉館まで時間制限なく鑑賞することができます。
現在開催中の展覧会『STEPS AHEAD: Recent Acquisitions』
アーティゾン美術館のコレクションは、印象派や日本近代洋画がメインですが、抽象表現を中心とする20世紀初頭から現在までの美術コレクションも豊富!
今回の展覧会『STEPS AHEAD』では、そんな近世美術を中心に、今までの展覧会で未公開だった新収蔵品92点を含む全201点が公開されています。
展覧会は作品数が100点〜150点のものが多いので、今回の『STEPS AHEAD』は見応え十分ですよ!
写真撮影OKの展覧会!
美術館が展覧会を行う場合は、国内外の他の美術館から作品を借りてくるケースがほとんど。そのため、作品の写真撮影はほぼ不可能です。しかし、『STEPS AHEAD』で展示されている作品はほとんどアーティゾン美術館が所有しているものなので、禁止マークのついている一部の作品を除いて、ほとんどの作品が撮影可能です!
ただ、スマホのカシャという音は他の鑑賞者の迷惑になるので、写真を撮りすぎない・シャッター音が出る部分を指で押さえるなどの配慮は必要です。また、フラッシュや三脚の使用は禁止です。
展覧会の作品を少しだけ紹介!
Section1 藤島武二の《東洋振り》と日本、西洋の近代絵画
▲ 《針仕事》/黒田清輝
展示室に入って最初の展示作品《針仕事》。1880年からフランスで突出した存在になっていた印象派のような光の捉え方で描かれています。濃淡を使って、窓から差し込む柔らかな光に包まれる窓辺の女性にフォーカスするようになっています。
日本の画家にあまり興味がなかったのですが、この繊細な絵は惹きつけられるものがありました。
▲ 《すわるジョルジェット・シャルパンティエ嬢》/ピエール=オーギュスト・ルノワール
偉大な印象派の画家・ルノワールが描いた《すわるジョルジェット・シャルパンティエ嬢》。少女が身につけている高級そうな青色のドレスに靴下、さらには絨毯や家具からこの子が裕福な家庭の子供だということがわかります。
まだまだ子供なのに足を組んだおませなポーズを取っている、その姿がまた愛らしいです。
Section2 キュビズム
▲ 《サント=ヴィクトワール山とシャトー・ノワール》/ポール・セザンヌ
「自然を円筒、円錐、球として扱う」という言葉を残し、キュビズムの発展に影響を与えたセザンヌが描いた《サント=ヴィクトワール山とシャトー・ノワール》。セザンヌはサント=ヴィクトワール山を数多く描きましたが、その中でもこれはセザンヌの集大成と言える傑作。
▲ 《キュビズム的風景》/ジャン・メッツァンジェ
キュビズムといったらピカソとブラックが代表的な画家で、Section2にももちろん2人の作品が展示されていましたが、私のお気に入りはジャン・メッツァンジェの《キュビズム的風景》。これぞ王道のキュビズム!という作品で、初心者でもとてもわかりやすいです。
Section3 カンディンスキーとクレー
▲ 《数学的なヴィジョン》/パウル・クレー
スポットライトに照らし出されたかのような《数学的なヴィジョン》。中心には大小さまざまな天秤、それを囲むように散りばめられた数字やアルファベットや記号、一番上には黒い天体のようなもの。まるで宇宙を表現しているかのような不思議な魅力のある絵画です。
▲ 《宙飛ぶ竜の到着》/パウル・クレー
なんともメルヘンチックな名前の《宙飛ぶ竜の到着》。まるで絵本から飛び出してきたような可愛らしいオレンジ色の竜です。絵を見ただけでは竜とはわからなかったので、タイトルに助けられました。
Section5 抽象表現主義の女性画家たちを中心に
▲ 《ナンバー2、1951》/ジャクソン・ポロック
第二次世界大戦後、抽象表現を先導したポロックの《ナンバー2、1951》。黒い曲線がメインですが、色がつけられた三日月もしっかり主張しており、凄まじいエネルギーを感じる作品です。
▲ 《無題(闘牛)》/エレイン・デ・クーニング
ウィレム・デ・クーニングの弟子であり、妻でもあるエレイン・デ・クーニングの《無題(闘牛)》。色鮮やかな色彩、荒々しい筆触で描かれた雄牛からは怒り狂っている様子や闘牛の激しさが伺えます。
今回の展覧会のメインビジュアルになった絵画で、チラシなどに描かれているのもこの絵画です!
Section7 デュシャンとニューヨーク
▲ 《ペニー・アーケイド(ランナー・ワルツ)》/ジョゼフ・コーネル
メルヘンかつとてもユニークなコラージュ作品《ペニー・アーケイド(ランナー・ワルツ)》。ルネサンス美術を想起させる2体の天使、月や土星といったの惑星など、情報量が多すぎて、見ていて混乱しました。しかし後から思い出す、なんだかクセになる作品です。
Section8 第二次大戦後のフランスの抽象技術
▲ 《水に沈んだ都市》/ザオ・ウーキー
中国出身ですが、フランスに渡って西欧美術を学んだザオ・ウーキーの《水に沈んだ都市》。温かみのある色合いでうっすらと光を放つ街と冷たい色合いの海の対比が美しいです。よく見ると、方形の建物が多く、ヨーロッパらしい都市の景観になっています。
Section11 日本の抽象絵画
▲ 《朱の丸》/オノサト・トシノブ
全体を覆うモザイク風の方形の中心にインパクトのある朱色の大きな丸が描かれた《朱の丸》。幾何学的抽象の様式で、かなり細かいところまで綿密に描かれています。ぜひ近づいて見て欲しい作品です。
▲ 《無題[無限の網]》/草間彌生
言わずと知れた日本を代表する芸術家・草間彌生の《無題[無限の網]》。ぱっと見、赤一色の単調な絵画のようですが、よく見ると網のようになっていて網目の大きさも異なり、かなり細かい作品だというのがわかります。
Section13 アンリ・マティスの素描
▲ 《縞ジャケット》/アンリ・マティス
マティスが長女のマルグリットをモデルに描いた《縞ジャケット》。即興的にスケッチされた顔は穏やかな表情で口角は上がっていて、楽しげな様子が伺えます。
帽子についた花の濃いピンク、ネックレスの緑色が全体的に淡い色の絵画にアクセントを加えています。
▲ 《ジャッキー》/アンリ・マティス
マティスが孫娘のジャックリーヌをモデルに描いた《ジャッキー》。単純ながら勢いのある筆使いで描き上げられています。アカデミックなデッサンの描法とは一線を画すマティスのデッサン、とても魅力的です。
アーティゾン美術館で開催中の『STEPS AHEAD: Recent Acquisitions』は、美術好きなら間違いなくテンションが上がる贅沢なラインナップでした。今まで興味がなかった人でも美術が好きになるきっかけになるかも!