近年、自転車がレジャーとして定着してくるなかで、鉄道の廃線跡を利用したサイクリングロードに注目が集まっています。なぜなら勾配が緩く、信号がないためストレスフリーに走行を楽しむことができるほか、目まぐるしく変わる景色と、道の至る所に残る文化遺産を楽しむことができるから。その中でも、歴史をつないで走る「片鉄ロマン街道」と渓谷美が見事な「メイプル耶馬サイクリングロード」の二つを紹介していきましょう!
廃線跡サイクリングの魅力!山里をストレスフリーに快走
「サイクリングロード」というカテゴリで見ると、そのほとんどは川沿い道でしょう。なぜなら信号がなく川に沿って平坦な道が続くため、自転車道として整備しやすいからです。確かに、川沿いを走るのはとても気持ちよいですが、川沿いだけでは景色が単調という問題があります。
そこで今回紹介する「廃線跡サイクリングロード」の魅力が光ってくるのです。なぜなら山間部を走る電車に乗ればわかるように、景色がどんどん変化していくから。小さな集落を過ぎて田園の中を走ったり、川を横切ったり、谷地に入ったり。いろんな角度から、まるで車窓から景色を眺めるようにサイクリングしながら風景を楽しむことができるのが醍醐味です。
それに加えて、廃線跡ならではの発見もあります!例えば、かつての駅のホームの跡、鉄道用のトンネルや橋、また信号や踏切の跡など。かつての在りし日を忍ばせる遺構の数々。これが旅情を高めてくれるでしょう。また、鉄道をトレースするので基本的に平坦で走りやすいのも嬉しいですね。
地元に愛された鉄道の軌跡をめぐる!「片鉄ロマン街道」
「片鉄ロマン街道」は、かつて岡山県のローカル私鉄として走っていた同和鉱業片上鉄道が平成3年に廃止になったのち、その廃線を利用してつくられたサイクリングロードです。片上鉄道は、岡山県備前市から同県の柵原町までを結んだ鉱山鉄道で、柵原鉱山で産出される硫化鉄鉱を片上港へ輸送するために設けられ、沿線住民の通勤や通学に利用されました。
<片鉄ロマン街道の基本情報>
住所:岡山県和気郡和気町清水
その証拠に、終点となっている「旧吉ヶ原駅」は、今でも大切に保存されており、当時の佇まいを今に残しています。またサイクリングロードとして廃線が復活したのも、地元にいかにこの鉄道が愛されていたかを物語るでしょう。
<旧吉ヶ原駅の基本情報>
住所:岡山県久米郡美咲町吉ケ原
アクセス:JR和気駅から自転車で1時間半~2時間
サイクリングロードの至る所には当時の遺構が散見されます。特に備前市側にある「あませ駅」は駅の待合所とホームがしっかり保存されていて、時代を経て役割は変わったものの、サイクリング中の休憩スポットとして人々から愛され続けています。
<あませ駅の基本情報>
住所:岡山県和気郡和気町岩戸
アクセス:JR和気駅から自転車で20分
渓谷美を抜けて爽快な田園風景!「メイプル耶馬サイクリングロード」
大分県日田市から中津市に抜ける山国川一帯に広がる大渓谷は「耶馬溪」と呼ばれ、日本三大渓谷美ならびに日本新三景に選ばれている九州有数の景勝地です。
そんなこの場所にかつて走っていたローカル私鉄「耶馬溪鉄道」を自転車道として復活させたのが「メイプル耶馬サイクリングロード」になります。
<耶馬溪の基本情報>
住所:大分県中津市
アクセス:JR中津駅から車・バスで30分
このサイクリングロードの醍醐味は何と言っても、進めば進むほど刻々と変化する景色や渓谷でしょう。岩の切通、田園風景、かつての鉄道の陸橋やトンネルなど、至るところに見所が散りばめられています。
かつてここに鉄道を敷いた方々の努力、沿線の町の賑わい、そしてその車窓から眺めたような癒しの風景が思い起こされるようです。
<メイプル耶馬サイクリングロードの基本情報>
住所:大分県中津市山国町守実89
アクセス:JR中津駅から車・バスで1時間
そんなこのサイクリングロードの顔となっているスポットが「青の洞門」です。江戸時代に全国を巡行していた禅海和尚が、危険な道を通っていた住民を見かねて、ノミと金槌だけで大岩壁を掘って作ったという道で、日本初の有料道路だと言われています。
この道を走り抜ければ、物凄いスケールに圧倒され、思わず見上げてしまうでしょう。そして、「どれほど大変だったのか!?」その偉業の裏に隠される苦労についても想像してしまいますね。
<青の洞門の基本情報>
住所:大分県中津市本耶馬渓町曽木
電話番号:0979-52-2211
アクセス:JR中津駅から車・バスで30分
スポーツ自転車のレンタサイクルを有効活用してみよう!
最後にサイクリングを楽しむ方法について説明します。現在、スポーツ自転車(ロードバイクやクロスバイクなど)が一般に趣味として受け入れられるようになりました。
こうした自転車は、軽量でペダルの踏みも軽く、楽に気持ちよく長距離を走ることができます。そして日本のサイクリングスポットと言われる場所には、このスポーツ自転車を貸し出すところも増えています。今回の二つのサイクリングロードでも同様です。
まず「メイプル耶馬サイクリングロード」については、「耶馬溪サイクリングターミナル」にてロードバイク・クロスバイク・マウンテンバイクなど豊富にレンタサイクルを取り扱っています。
特徴としては、3時間400円・フリータイム500円とリーズナブルながら、車種にかかわらず均一料金ということ。スポーツ自転車をこの料金でレンタルできる場所はそうそうないので、ハードルが下がりますね。
また、乗り捨てが可能ということも嬉しいです!追加料金が500円かかりますが、これで体力的なハードルが下がりますね。加えて、サイクリング後にシャワー室を無料で利用できたり、レンタサイクルとセットの格安宿泊プランもあるので要チェックです!
<耶馬溪サイクリングターミナルの基本情報>
住所:大分県中津市耶馬溪町大字柿坂353
電話番号:0979-54-2700
アクセス:JR中津駅から車・バスで1時間
次に「片鉄ロマン街道」でも、電動アシスト自転車が主流ですが「和気鵜飼谷交通公園」で10台、「和気駅」で2台、「備前市サイクリングターミナル」で数台マウンテンバイクの貸出しを行っているので要チェック!もちろんそれ以外にも、電動アシスト自転車のレンタルもありますよ。
そのうち「備前市サイクリングターミナル」でのレンタル料は驚くべきことに「無料」!予約はできないので、オープンの午前9時に向かうことをおすすめします。
<備前市サイクリングターミナルの基本情報>
住所:岡山県備前市西片上1011-3
電話番号:0869-63-0271
アクセス:JR西片上駅から徒歩15分
素朴だけど、土地の歴史と今が詰まった廃線サイクリング!
ローカル鉄道が生まれ変わった「廃線サイクリングロード」。メジャーな観光地に比べて目立たない存在かもしれません。しかし、そこには過去の姿から現在に至るまで、その地元の歴史が詰まっており、自転車でサイクリングロードの道を走り、その土地の変化の軌跡を紡げば、様々な情景を追想することができます。
さらにサイクリングロードを囲う自然や集落を駆け抜ける爽快さは、内陸の廃線跡をトレースするからこその感覚!ぜひ今注目の「廃線サイクリング」へ出かけてみてください。