▲ 作家名 / 作品名:ミハエル・ハンスマイヤー《ムカルナスの変異》
現在、六本木の森美術館で開催中の展覧会「未来と芸術展」。美術館で開催されていますが、美術という枠組みを超えて、建築やバイオテクノロジーなどさまざまなジャンルの作品が展示されていました。
ジャンル横断的な展覧会なので美術に興味がない・詳しくない方でも楽しむことができ、自分たちの未来を考えるいい機会になりますよ。
びっくりする未来都市の数々
会場入ってまず目に飛び込んでくるのは、あらゆる未来都市のプロジェクト!近い将来実現するであろう都市から「え、こんな都市できるの!?」とびっくりするような興味深い都市まで、幅広い未来都市が紹介されています。
▲ 作家名 / 作品名:XTUアーキテクツ《Xクラウド・シティ》
私が特に印象に残ったのが《Xクラウド・シティ》。これは人口過密や地球温暖化などで地表に住むことができなくなった未来、雲の上の大気圏に居住空間を作ろうという壮大なプロジェクトです。空中都市のモジュールは全て3Dプリンターによって作られるのだそう。
フランスの小説家・ヴェルヌはかつて『人間が想像できることは、人間が必ず実現できる』という名言を残しました。この空に浮かぶ街も本当に実現する日が来るかもしれませんね!
▲ 作家名 / 作品名:ビャルケ・インゲルス・グループ《オーシャニクス・シティ》
海の上に浮かぶ夢のような未来都市《オーシャニクス・シティ》。一見小さな島国のような感じですが、地球温暖化による海面上昇にも耐えうる海上都市。ソーラーパネルを使うなど、地球に優しい再生可能エネルギーを使用しています。
Xクラウド・シティよりは実現可能性が高そうです。
▲ 作家名 / 作品名:ヴァンサン・カレボー・アルシテクチュール《2050 パリ・スマートシティ》
中でも実現可能性が高そうだったのが、パリ市の委託によって作られた企画「2050 パリ・スマートシティ」。区画によって「歴史的なパリ」や「未来のパリ」などコンセプトは異なるようですが、すべてに共通するのは草木が生い茂る緑のスペースがかなり多いということ。
パリの歴史ある街並みが少し変わってしまいそうで寂しい気持ちもありますが、人類と自然が共生していくにはこのくらいの変革が必要なのかもしれませんね。
想像を超える次世代の建築たち
▲ 作家名 / 作品名:ミハエル・ハンスマイヤー《ムカルナスの変異》
暗い空間に浮かび上がるようにして展示されている《ムカルナスの変異》は、数多くあるインスタレーションの中でも特に目を引く作品。カーテンの中は、アルミの円筒が氷柱のように天井から伸びています。
▲ 作家名 / 作品名:ミハエル・ハンスマイヤー《ムカルナスの変異》
「ムカルナス」というのはイスラム建築で使われる装飾の一種で、小さな窪みが層を成して繰り返す形式のことをいうのだそう。コンピュータによって計算されて並べられた14,000本以上のアルミの円筒は、力強くもどこか不気味さもありました。
▲ 作家名 / 作品名:エコ・ロジック・スタジオ《H.O.R.T.U.S. XL アスタキサンチン g》
まるでサンゴ礁のような《H.O.R.T.U.S. XL アスタキサンチン g》。造形物の中に見える緑色の物体は、微細藻類のユーグレナ(ミドリムシ)。建築とバイオテクノロジーを掛け合わせた次世代の建築です!
ユーグレナが効率よく光合成を行って酸素を生成することで、造形物内では生物コロニーを形成することができるようになるのだそう。将来、自分たちもこのコロニーの中で生活するかも?
離れていてもドライブを楽しめるようになる!
▲ 作家名 / 作品名:Nissan Intelligent Mobility x Art プロジェクト《Invisible to Visible〜未来の自動運転〜》
もうすぐ自動運転の時代が到来しますが、さらに先の時代では自宅にいながら友人・知人とドライブを楽しめる時代が来るかもしれません。この夢のような体験を可能にするのが《Invisible to Visible〜未来の自動運転〜》です。
▲ 作家名 / 作品名:Nissan Intelligent Mobility x Art プロジェクト《Invisible to Visible〜未来の自動運転〜》
友人と体験してみました!助手席に座る人はスコープをつけるとドライバーが実際に見ている景色と同じ景色を見ることができ、本当にドライブしているような体験ができます。横を向くと離れた場所にいてもすぐ隣に座っているように見え、一緒にドライブを楽しんでいるような気分を味わえました。
切り落とされたゴッホの耳を再現!?
▲ 作家名 / 作品名:ディムート・シュトレーベ《シュガーベイブ》
《シュガーベイブ》は、ゴッホが自ら切り落としたと言われている左耳の“生きた”レプリカ。現代に生きるゴッホの親族たちから採取した細胞と人工物から生成されたバイオアートです。設置されているマイクを使って呼びかけたら耳が反応するかも...?
食べ物やペットの概念が変わるかも
▲ 作家名 / 作品名:長谷川 愛《ポップ・ローチ》
一説では、数十年後には人口増加に伴い食糧難が起こると言われています。その解決策のひとつとして注目されているのが「昆虫食」。コオロギなどは今も食べられていますが、そのうちゴキブリまで食べるようになるかもしれません。
▲ 作家名 / 作品名:長谷川 愛《ポップ・ローチ》
《ポップ・ローチ》は、赤、青、緑などポップな色と、ミントやジャスミンなどの香りがついた食用ゴキブリ。色や味によってリラックスできたり、元気が出たりと効果はさまざまです。
数十年後には平気でゴキブリを食べているんでしょうか。色で多少ポップな仕上がりになっていますが、フォルムはそのまま。私はまだ無理そうです...。
▲ 作家名 / 作品名:OPEN MEALS《SUSHI SINGULARITY》
日本が世界に誇る日本食「お寿司」もまったく違ったものに変化するかもしれません。なんと米粉、寒天、海藻などを原材料とするジェルさえあれば、お寿司が食べられるようになるんだとか。にわかには信じがたいですが、実際にこのプロジェクトは着々と進んでおり、開店計画も進行中なのだそう。
▲ 作家名 / 作品名:OPEN MEALS《SUSHI SINGULARITY》
お寿司の形も想像の遥か上をいくものばかり!お城の形をしている「イカ城(上段右から2つ目)」や、まるで剣山のような「マイクロピラー穴子(下段右から2つ目)」など、視覚でも楽しめるお寿司を口にする日も近いかもしれませんよ。
▲ 作家名 / 作品名:GROOVE X《LOVOT》
▲ 作家名 / 作品名:ソニー《aibo》
近未来の家族の一員となりうる《LOVOT》と《aibo》。2つとも人の役には立たないけれど、見たり触れ合ったりするだけで心が癒される愛おしい存在です。ほんのり温かくリアルな感情を持つ《LOVOT》、本物の犬のような動きをする《aibo》、一家に一匹欲しいですね。
ただ展示されているだけでなく、触れ合うこともできます。目の動きや身振りなど、本当に生きているような振る舞いをするので、たった数分でしたが愛着が湧きました。
今は「ありえない、実現不可能だ」と思うようなものでも、数年後・数十年後には生活の中に当たり前にあるものになるのかと考えると、とてもワクワクしました!
老若男女誰でも楽しめる展覧会なので、ぜひ未来の生活をのぞきに行ってみてください。
※記事内で使用している作品の写真は「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際」ライセンスでライセンスされています。
「未来と芸術展」概要
会場:森美術館(六本木ヒルズ森タワー53階)
会期:2019年11月19日(火)~ 2020年3月29日(日) ※会期中無休
開館時間:10:00~22:00(最終入館 21:30) ※火曜日のみ17:00まで(最終入館 16:30)
料金:一般 1,800円、学生(高校・大学生)1,200円、子供(4歳~中学生)600円、シニア(65歳以上)1,500円