フィンランドを代表する建築家兼デザイナー、アルヴァ・アアルト。
ヘルシンキ郊外にある彼の自邸とスタジオは見学が可能で、アアルトの世界を存分に楽しめます。
このしおりでは、自邸・スタジオの予約方法や交通手段、そして見所の一部をお伝えします!
アアルト自邸・スタジオのガイドツアーは完全予約制!
アアルトの自邸とスタジオは見学可能といっても、自由に出入りできるわけではなく、ガイドツアーに参加するという形式です。
ツアーは人気が高く、当日急に思い立って現地に行っても定員オーバーで入れないこともあります。ワタシが参加した日も、予約なしで突撃したファミリーが入館を断られていました。
そのため、事前に必ず予約をしてください。
予約はAlvar Aalto Foundationの公式サイトからできます。
>> Alvar Aalto Shop
サイトを開くとフィンランド語が並んで「わっ、こりゃ何じゃ!」となりますが、英語に切り替えられるのでご安心を。
こちらが自邸とスタジオの予約ページへの入口です。
開くと「ツアーの時間には絶対遅れるな」「返金は不可」などの注意事項が書いてあります。
人数と日時を入力してクレジットカードで支払うのですが、日時の選択はなぜかスマホでは上手く出来ませんでした。PCなら問題なく日時を選べたので、スマホで出来ない場合はPCでお試しください。
支払いが完了すると、登録したメールアドレスにEチケットが届きます。
チケットのヘッダーが可愛い! これだけでテンションが上がりまくります!
チケットにはバーコードが載っているので当日読み取るのかと思っていたら、受付で名前を伝えると「あなたは支払いも済んでいるし、何の問題もないわよ! どうぞ楽しんでね!」と言われるだけでした。
アアルト自邸・スタジオへはトラムで行こう!
アアルトの自邸とスタジオがあるのは、ヘルシンキの郊外です。
せっかくですから、ヘルシンキの風景を楽しみながらトラムでのんびり移動しましょう。
まずはトラム4番線乗り場を探せ!
アアルト自邸・スタジオへ行くには、トラムの4番線に乗ります。4番線はヘルシンキ中央駅周辺も通っているので乗りやすい路線です。
こちらが乗り場に掲げられているトラムの路線図。
アアルト自邸・スタジオがあるのは4番線の端の方、Laajalahden aukioです。
トラムのチケットの購入方法
トラムのチケットは、乗り場にある自販機で買えます。
さて、ここで困ったのがどのチケットを買えばいいかということ。
鉄道はエリアによって料金が分かれています。ヘルシンキのヴァンター国際空港があるのはCエリア、中央駅のある市街地はAエリア。Aエリア内をウロウロするだけなら安いチケットを買えばいいし、遠くへ行こうとすると料金が上がります。
Laajalahden aukioはちょっと離れているけど、これは果たしてAエリア内なのか、それともBエリアなのか…?
と困惑し、トラム乗り場に居た老夫婦に訊ねると「Bエリアに行くにも同じ料金だから一番安いチケットで大丈夫だよ」と教えてもらいました。
これがトラムのチケットの自販機。
ABエリア用の、2.80ユーロのチケットを買えばいいわけですね。
フィンランドは、他のヨーロッパ諸国と同様クレジットカード社会です。
どんな少額でもクレジットカード払いでOK。もちろんトラムのチケットを1枚買うだけでもカードが使えます。小銭をじゃらじゃらしなくて済むので、旅行者にはありがたいです。
トラムの乗降の際には、チケットの提示は特に求められません。
期間中トラムや地下鉄が乗り放題になるデイチケットの場合は、トラムの出入口にカード読み取りの機械があるのでそこでピッとやってください。
こちらがトラム車内。
シートの路線図のデザインが可愛いです。
では目的地まで車窓の風景をお楽しみください。市街地からちょっと離れただけで白樺の森があったりして、ゆったりとした雰囲気を味わえます。
アアルト自邸・スタジオ周辺の散歩も楽しい!
ガイドツアーに遅刻するわけにはいかない! と気合いを入れて早めにLaajalahden aukioに到着。
というわけで、トラム乗り場の近くにあるピザ屋でランチを摂りました。
KOTIはフィンランドではメジャーなピザチェーン店のようで、ヘルシンキ市内でも見かけました。
店内はポップでキュート。
食べたのはマルゲリータ。
ベビールッコラがもりもり乗っていました。美味しかった。
さて、このKOTIの入口の左側の坂道を登り、最初の角を右手に曲がってしばらく歩くと、左手にアアルト自邸があります。
しかしガイドツアーが始まるまでにまだ時間があるので、海辺まで散歩しました。
この界隈は高級住宅地になっていて、素敵な家がたくさん並んでいます。
まるで映画のセットのようだわあ、とうっとりしながら散策。
ちょっとした広場や公園には緑がいっぱい。
フィンランド人は休みになると森や湖に行くとのことですが、日本人から見ると「住宅地にも充分緑が溢れているじゃん!」と思ってしまいます。
近くには海もあるし。
いやー、こんなゆったりした場所なら、いつまでも居られるわあ。
となりそうなものですが、あいにくの曇り空で7月でも寒かったです。フィンランド人ですら革のジャケットや薄手のコートを着ていたくらいですから、夏の旅でも油断せずに防寒着を用意してください。
スタジオ・アアルトは、光に溢れた建物だった…!
さて、本題。いよいよアアルトの世界に突入です。
ワタシはスタジオは13時30分、自邸は15時のツアーを予約しました。
それぞれのツアー時間は1時間。スタジオと自邸との距離は徒歩5分程度。ツアー後に建物の外観をゆっくり撮影してもこのスケジュールなら大丈夫と考えました。
同じように考える人はほかにもいるようで、スタジオでも自邸でも一緒になった方が数人いました。
こちらがスタジオ・アアルト。
外観は素っ気ないほどシンプルな白い建物です。
しかし、庭に回って眺めると。
緩く弧を描いた建物と、芝生が敷き詰められた段差が印象的。まるで劇場のようではありませんか。
ガイドツアーは、スタジオも自邸も同じスケジュールです。最初の30〜40分はガイドさんからの説明を受け、残りの時間は自由時間です。
スタジオでは、まず1階の食堂に通され、着席して説明を聞きました。
机も椅子も照明もカーテンも、何もかもアアルトデザイン!
ワタシは自宅のテーブルやスツールをアルテック(アアルトが創設したインテリアメーカー)製品にしているくらいアアルトデザインが好きなので、この食堂でひとときを過ごせるだけでも鼻血を噴きそうでした。
職員はこの食堂でランチを摂るとのこと。ああ、ワタシもここで働きたい。
ガイドは英語で説明してくれます。アアルトの人生や建物のディテールなどを丁寧に教えてくれます。
英語が苦手なワタシでも大体聞き取れたスピードで話してくれるのでご心配なく。ガイドブックでアアルトについて予習しておけば、より楽しくガイドを聞くことができると思います。
食堂での説明の後は、2階の仕事場へ。
なんて開放的な空間なんでしょう!
ちょうどこのときは土砂降りになって空が暗かったのですが、それでもこの明るさです。
見学中に雨が上がったので、外が明るいときの仕事場も改めて撮影。
写真で見ると大差ないですね。作業の邪魔になりそうな直射日光は避けつつ、天気が悪くても充分に明るいという、完璧な採光でした。
仕事場の展示品の中に日本製品を発見して、嬉しくなりました。
1階は天井が低めで、どちらかというとお籠り感があります。対して2階は天井が高く取られており、とても広々とした印象でした。
仕事場の隣にあるスタジオでは、更なる開放感が味わえます。
憧れの名作の椅子が…! 照明が…!
階段状の庭に面した大きな窓から光が差し込んで、アアルトデザインの家具を明るく照らしています。
スタジオ・アアルトの素晴らしいところは、展示されている椅子が座り放題なところ。高価で買えないパイミオチェアに座り放題なんて、夢のようでした。
ひとつ驚いたのは、床のリノリウムの効果でした。
スタジオも自邸も中は土足禁止で、入口で靴を脱ぐか靴カバーの装着が必要です。ワタシはスタジオでは靴を脱いだのですが、1階のタイルの床では足が冷えて靴カバーを選択しなかったことをちょっと後悔しました。
ところが、2階の仕事場のリノリウムの床を踏むと、ひんやり感がまったくない!
リノリウムを素足(というか靴下)で踏んだのは初めてだったので、リノリウムにこんな効果があると初めて知りました。
アアルト自邸は、居心地のいい家づくりのヒントがいっぱい!
スタジオ・アアルトを堪能した後は、自邸へ移動です。
ホワイトとブラウンのモダンな外観。これが1936年の建築物とは驚きです。
こちらが1階のリビング。
スタジオと同様、家具や照明がアアルト三昧で、ときめきます!
残念なのは、スタジオと違って自邸の椅子は座れないこと。アアルトの家を体感というより、美術館で展示品を眺めるというカンジになり、少々ガッカリでした。
リビングの奥にはダイニング。
ダイニングチェアはイタリア製とのこと。自身の家具だけでなく別のデザインも取り入れられていて、アアルトの「好き」がどんなものかを垣間見ることができます。
こちらは2階のホール。第二のリビングといった趣です。
2階にはゲストルームや主寝室、子ども部屋などがあります。
主寝室はそれなりに広いけれど、ゲストルームや子ども部屋はこじんまりとした部屋です。仕事場であるスタジオと違い、個人の自宅なら開放感はさほど必要なく、むしろ小さな空間があった方が落ち着くのだなと思いました。
アアルト自邸には壁の色や照明の位置など自分の家でも真似したい要素がたくさんあって、インテリアのいい勉強になりました。
バスルームの採光がちょっと面白いことになっているので、ぜひ現地で確認してください。
帰りのトラム乗り場にはチケットの自販機がない!?
アアルトの世界を満喫し、夢見心地でヘルシンキ市内へ戻ります。
帰りもLaajalahden aukioからトラムに乗りましょう。
しかし、このトラム乗り場にはチケットの自販機がありません。
でも心配ご無用。すぐ近くにキヲスクがあり、そこでチケットを購入できます。
自販機で買うとぺらーんとした紙が出てきますが、これはもう少し頑丈なカードです。
これもカードリーダーで読み取る必要はなく、提示のみ。観光客慣れしているのか、キヲスクの店員さんが詳しく教えてくれました。
これであなたも完璧にアアルト自邸・スタジオを巡ることができます。
フィンランドのデザインの真髄を、ぜひその目でお確かめください!