いつまでたっても出世できない、暮らしが良くならないことを意味する「うだつが上がらない」という慣用句がありますが、徳島県美馬市には “うだつが上がる”町があります。
「うだつが上がらない」の「うだつ」って何?
▲ これが「うだつ」!
「うだつ」とは、隣家から火事が燃え移るのを防ぐために造られた「防火壁」のこと。
うだつを造るには1つあたり150万円ほどの費用がかかり、うだつが上がっている家は裕福な家に限られていたことから、徐々に “富の象徴” としての意味合いが強くなりました。これが「うだつが上がらない」という慣用句の由来だといわれています。
▲「防火」のために造られた古い時代のうだつ(手前)は隙間が無いのに対し、明治時代以降に造られた「装飾」のためのうだつ(奥)は、2階屋根との間に隙間があります
「脇町うだつの町並み」でタイムスリップ気分
▲「脇町うだつの町並み」
徳島県美馬市の脇町(わきまち)には、“うだつが上がった”家々が軒を連ねる古い町並みが残っており、国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されています。
とても静かな町ですが、美しい景観に溶け込むレトロなカフェやゲストハウスもあり、のんびり散策しながらの発見が楽しい。
▲ 可愛い猫たちに出会えるかも?
ふと路地を覗いてみると、3匹の猫たちが気持ち良さそうにお昼寝しているところを発見! ガイドさんによると、このあたりにはたくさんの猫が住んでいるのだそう。
伝統の「藍染め」を体験!
▲「脇町うだつの町並み」の一画にある「藍染工房」。藍染めアクセサリーなどの販売も
脇町は江戸時代に「藍」の集積地として栄えた町。
美馬市観光交流センター横の「藍染工房」では、昔ながらの製法で作った染料を使用して、ハンカチ、ストール、エコバッグなどの藍染め体験ができます。(※要予約)
編集部も藍染めに初挑戦! まずは染料のことや、模様の付け方を教えていただきました。
▲ 発酵後の藍
徳島は、藍染めの元となる藍染料「すくも」づくりの本場。こちらではその「すくも」を使って、科学染料を使用しない「天然灰汁発酵建て」という昔ながらの製法で染料が作られています。
▲ さまざまなタイプの模様の付け方を教えていただきました
ただ染料液に浸しただけでは、綺麗な青色には染まりません。染料液に浸した後、空気や水の中にある酸素に触れさせることで青くなり、それを繰り返すことで濃い青になっていくのだそう。藍染め製品によくある白や水色の模様は、その仕組みを利用して付けられています。
▲ ハンカチに模様を付けるための準備
どんな模様を付けるかイメージしたら、真っ白なハンカチに結び目を作ったり輪ゴムをグルグル巻いたりして、酸素に触れない部分を作ります。これが模様となって出てくるというわけです!
▲ あたたかい...!
貸していただいたゴム手袋とエプロンを身につけて、いよいよ染め始めます!
染料液に浸している間も、まんべんなく染まるように布を動かし続ける必要があるとのこと。液から出ている部分があるとそこだけ先に酸化してムラができてしまうので、全体を液の中に浸しながら作業します。
▲ 酸素に触れさせる
1分ほどたったら液を絞り、青く染めたい部分を広げて空気中の酸素に触れさせます。
これを何度か繰り返したら、最後に水でよく洗います。自宅に持ち帰ってから灰汁(あく)を取り除く仕上げ作業がありますが、これにて藍染め体験は終了!
▲ 自分だけの藍染めハンカチが完成!
丁寧に教えていただけたので、初心者でも綺麗な藍染めハンカチができました。模様の付け方はもちろん、そのときの気温や湿度、液の管理の仕方などで出る色が異なるため、同じものはこの世に一つとしてありません!
“うだつが上がる”町で、伝統の技を体験してみては。
当時の繁栄を今に伝える建造物群は見ごたえがありました。観光地化が進みすぎていないため、のんびりと散策できるのも魅力です。風情ある「うだつの町並み」と伝統の「藍染め」を通して、江戸時代にタイムスリップしたような気分を味わってみてはいかがでしょうか。
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