京成金町線の小さな駅の柴又。
どこか懐かしい駅を出ると、目の前には帝釈天参道がまっすぐに伸びています。
草団子を焼く煙につられ歩くスピードは、いつのまにかゆっくりになっています。
すれ違う人の声もどこかのんびりと聞こえてくるようです。
道の先に柴又帝釈天の門が見えてきます。
帝釈天から江戸川方面へ歩き、土手の近くまで来ると、今回の目的地「葛飾柴又寅さん記念館」に着きます。
ここは、映画『男はつらいよ』の主人公・車寅次郎、通称寅さんの「ふるさと」柴又と、映画の世界を感じられる記念館です。
しかし、作品を一本も観ていなくても構いません。
「寅さん」を知らなくても大丈夫です。
扉の向こうに待っているのは、映画の知識ではなく、展示や音から想像する昭和の雰囲気です。
「寅さん」を知らなくても大丈夫
1969年に第1作が公開され、長く愛されてきた映画シリーズ『男はつらいよ』。
主人公の寅さんは、故郷の柴又を離れて全国を渡り歩く「フーテン」で住所を持たず旅から旅へ生きる男です。
旅の果てで人に恋をして、ふと思い立って柴又へ帰ってきます。
団子屋の家族を振り回し、やがてまた黙って旅立っていきます。
その繰り返しのなかに、笑いと、少しのせつなさが詰まっている映画のシリーズです。
ベージュのスーツに腹巻、丸い帽子、大きなトランク。
多くの日本人の記憶の中に、寅さんは静かに住みついています。
その記憶に会いに行く場所がこの記念館です。
映画を観ていなくても「あの格好」を、どこかで見たことがある人も多いのではないでしょうか。
参道を歩いているうちから始まる寅さん記念館見学
帝釈天参道をゆっくり歩き帝釈天で参拝して記念館へ向かうのがおすすめのルート。
記念館の楽しみは、実は記念館に着く前から始まっています。
帝釈天から江戸川方面へ歩き、土手の近くまで来ると、記念館が見えてきます。
「くるまや」の灯りが今もともっている
実際の映画撮影に使われた「くるまや」のセット内部。茶の間に並んで撮影できる有料フォトコーナーも人気。
記念館の中に入ると、照明を落とした展示空間が広がり、寅さんのテーマ曲が聞こえてきます。
順路の先に姿を現すのがこの記念館の目玉とも言える団子屋「くるまや」の撮影セットです。
映画の撮影に実際に使われた「くるまや」のセットです。
閉鎖された松竹大船撮影所から移設され、館内に保存されています。
のれんの先には、店先、台所、そして家族が集う茶の間。年季の入ったタイルの流し台、古びた冷蔵庫、ちゃぶ台。
セットの奥には、作中に登場する印刷所の一角も再現されています。
ずっしりと据えられた活版印刷機を前にすると、インクと湿った紙の匂いまで想像できます。
手のひらサイズで柴又を味わう
実物大のセットをあとにしたら次に待っているのは逆のスケールです。
1/16の精密模型で再現された「くるまや」は、直前に見た本物の空間と頭のなかで重なり、「あの部屋はこの位置か」と立体パズルのように楽しめます。
さらに「わたくし生まれも育ちも葛飾柴又です」のコーナーでは、遠近法を駆使した大掛かりなジオラマに昭和30年代の帝釈天参道が広がります。
モニターに映る街の中から、隠れた寅さんを探す仕掛けもあります。
駅、汽車、そして寅さんの旅支度
公開されている寅さんのトランクの中身。時刻表や手ぬぐいなど、旅暮らしを思わせる品々が収められている。
順路の終盤は「旅」がテーマです。
切符をハサミで切っていた時代の駅舎が再現され、伝言板や手書きの時刻表、運賃表が当時のままに並んでいます。
自動改札などどこにもない、人の手で切符が渡された時代の出入口を見ることができます。
その先には、鈍行列車のボックスシートが実物大でおかれています。
車窓には映画の映像が流れます。
座っているだけで知らない土地へ向かう列車の気分が静かに味わえます。
明治期に柴又を走った帝釈人車鉄道を再現した客車もあり、乗り込めば、別の時代の旅人になったような気分を味わえます。
資料展示コーナーでは、撮影で実際に使われた帽子や衣装とともに、寅さんのトランクが出迎えてくれます。
このトランク、なんと中身まで公開されています。
時刻表や目覚まし時計、手ぬぐいなど、寅さんの旅支度を思わせる品々です。
映画ではあまり見られなかった寅さんの旅支度の中身です。
受話器の向こうはまるで映画のなか
館内にはさりげなくいろんな仕掛けがあります。
黒電話や赤電話の受話器を手に取ると、懐かしい登場人物たちの声が聞こえてきます。
ジリリと鳴る呼び出し音に、電話を取り受話器を耳に当てると思わず返事をしてしまいそうになります。
あちこちに設置されたタッチパネルの寅さんクイズも楽しめます。
受話器を取ると登場人物の声が聞こえる黒電話。本物さながらに鳴り響くベルが、昭和の記憶を呼び起こす。
あわせて歩きたい山田洋次ミュージアムとカフェ
記念館の入館券には隣接する「山田洋次ミュージアム」の見学代金も含まれていました。
シリーズを生み出した山田洋次監督の半世紀にわたる仕事を紹介する展示があります。
松竹大船撮影所の様子を再現したジオラマも見応えがあります。
山田洋次ミュージアム内の大船撮影所ジオラマ。映画を支えた撮影現場の空気まで再現されている。
歩き疲れたら、館内の「TORAsan cafe」でひと息つくのもいいでしょう。参道の団子とはまた違う現代の甘さで締めくくることができます。
寅さん記念館へ行く前の「基本情報」
入館料はワンコインの500円。昔の暮らしに触れたい人にも、ただ散歩が好きな人にも、ここは静かに扉を開けて待っています。
寅さんの「帰り」を迎えに柴又に行ってみてはどうでしょうか。
施設名:葛飾柴又寅さん記念館
住所:〒125-0052 東京都葛飾区柴又6-22-19
電話:03-3657-3455
開館時間:9:00〜17:00(最終入館16:30)
入館料:
一般500円/小中学生300円/シニア(65歳以上)400円
※山田洋次ミュージアム共通
セット券:
寅さん記念館+山本亭:一般550円/シニア450円
前売券:
一般450円/小中学生270円
※京成線主要駅で購入可能
アクセス:
京成金町線「柴又」駅より徒歩約8分/北総線「新柴又」駅より徒歩約12分
駐車場:柴又公園駐車広場(普通車1回500円)
所要時間の目安:
30分〜2時間/柴又の街歩きや併設施設の見学まで含めると半日程度
※料金・営業時間などは変更になる場合があります。お出かけ前に公式サイトで最新情報を ご確認ください。



