周辺諸外国に支配されながらも交易の要所として栄えた港町、タリン。入り組んだ小道や丘へ通じる坂道はどこを歩いても絵になる街並み。絵本の世界が映し出されているかのような世界観が広がっています。
見どころは世界遺産に登録されている旧市街の城壁内に集中しており、高速船に乗ればヘルシンキからの日帰りも可能です。
各所に残る特徴的な名称は今も語り継がれる物語にちなんだもの。名前にまつわるお話もタリンを楽しむ上で欠かせない要素なので街歩きの前に知っておくとより楽しめることでしょう。
下町と山の手
タリン旧市街は商人や職人たちが築いた下町と、貴族たちが暮らした山の手に分かれていて、2つのエリアは緩やかな坂道「長い足」という意味のピック・ヤルクと勾配がきつい階段道「短い足」という意味のリュヒケ・ヤルクの2つの道で結ばれています。
▲ 長い足
「長い足」は貴族用、「短い足」は市民用として使われていたそうです。今も昔も高貴なお方は高い所に住むという構図は変わらないようですね。
▲ 短い足
下町
〇 ラエコヤ広場
旧市庁舎が建つ街の中心広場。広場中央にはコンパスが彫られた丸い石版があります。ここから5つの尖塔を見ることができるそうなんですが・・・ (旧市庁舎、聖オレフ教会、聖ニコラス教会、アレクサンドル・ネフスキー大聖堂、聖マリア大聖堂)
人が多くてそこに長居できず確認できませんでした(^_^;)
ちなみに5つの位置関係はこんな感じです。
広場に面して建つのがヨーロッパ最古の薬局とされる市議会薬局。ここでは『長寿の薬』や『失恋の薬』なんてのも処方してくれます。なんだか夢があるお薬ですね。是非立ち寄ってみてください。
〇 トーマスおじいさん
旧市庁舎の尖塔に注目してください。
~その昔開催されていたアーチェリーコンテスト。大会はポールの上の木製オウムを狙うというもの。誰も撃ち落すことができない中、貧しい家庭に育ったトーマスという少年が見事1発で撃ち落すことができました。以降、トーマス少年は衛兵の仕事を任され町のヒーローになりました~
この出来事が語り継がれ、尖塔の先端に立つ旗を持った番兵の像は「トーマスおじいさん」と呼ばれタリンのランドマーク的存在となっています。
〇 石になったオレフ
かつては「世界一」高い建造物だった聖オレフ教会=オレヴィステ教会。落雷や火災でダメージを受けた後、現在では「旧市街一」高い建造物となっています。
~自分の名前を伏せてひとりで教会を建て始めた巨人の職人オレフ。もし教会を建て終わるまで名前を知られずにいたら、報酬は1ペニーでいい、という条件でした。市民たちは彼の家をつきとめ、彼の妻が歌う子守唄から"オレフ"という名前を聞き出すことに成功。教会がほぼ完成し、塔の頂上に十字架を取り付ける最後の仕事に取りかかっていたオレフに、市民が「オレフ!」と名前を呼んだところ、彼はそのショックで落下して、石化してしまいました~
教会の外壁には石化したオレフの亡骸が横たわっています。見つけるまで何度も右往左往してしまいました。キリスト受難の物語のレリーフの下にあるので、是非探してみてください。
〇 のぞき見トム
ラエコヤ広場から延びるピック通り。ピック通り25番地にあるアールヌーボーの豪奢なファサードが目を惹く建物を見上げてみてください。屋根に座っているオッサン像があります。このオッサンはかつての住人トム。向かいに住んでいた女性をいつものぞいていたため「のぞき見トムの家」と名付けられたとか。実在の人物という噂もありますが、真偽のほどは分かりません。
〇 歴史の道
エストニアの歴史が刻まれたプレートの道があります。
はじまりは氷河期の終わりから
1918年エストニア共和国建国から500年後の2418年まで。
とうてい2418年を見届けることはできませんが、さらにその先のプレートも増え続けて欲しいと願います。
山の手
〇 コフトゥの展望台
「長い足」を通って丘の上へ。展望台からはバルト海と下町、そして新市街が一望できます。ちなみに先ほどの「トーマスおじいさん」はここから撮影したものです。
〇 のっぽのヘルマン
諸外国に支配されていた時代も現在も、政治の中心地として機能しているトームペア城。建物はエカテリーナⅡ世の時代にピンクの宮殿風に改修されました。「のっぽのヘルマン」と呼ばれる塔は権力の象徴。常にその時代の支配者の旗が掲げられ、現在はもちろん、エストニアの国旗が掲げられています。
来年は独立からちょうど100年。盛大なイベントが催されそうな予感・・・。この記念すべき年を狙って行ってみてもいいかもしれません。
街に散らばるストーリーを楽しみながら、おとぎの国へ迷い込んでみてはいかがでしょうか。