乗れるのも今のうち? タイ国鉄道でドンムアン空港からバンコク中心部まで行ってみました
これまで何度かバンコクに行きましたが、今回はLCCの航空会社を利用したので、初めてスワンナプーム国際空港からではなくドンムアン空港からバンコク市内に向かうことになりました。
インターネットで検索してみると、バンコク市内への交通手段としてはバス+BTS(バンコク・スカイトレイン)かタクシーの活用を勧めているサイトが多い中、今回は敢えてタイ国鉄道を使ってみることにしました。
ドンムアン空港からの移動に鉄道を利用したわけ
旅行雑誌などでバンコク市内の地図を見てみると、ど真ん中に終着駅であるバンコク駅(通称フアランポーン駅。現地名でクルンテープ駅)がドーンとあり、そこから北や東に延びる路線があります。
バンコクには何度か訪れてあちこち観光していますが、一度も乗ったことがありません。というか、利用する機会がありませんでした。
このままではこの路線に乗ることはこの先もずっとないかも。
また、バスやタクシーでの移動だと単なる移動の「手段」という感じであまり面白くないような気がしまして、せっかくなら列車で旅情を感じてみたいと思い、今回乗ってみることにしました。
空港から駅までの道順が分かりにくい
ドンムアン空港に着いたのが朝5時。
空港の案内所で鉄道の駅への行き方を聞くと、「2階に上がってから行って下さい」とのこと。
案内所のすぐ横にあった、ホテルの玄関口らしきエレベーターに乗って2階に上がりました。
「鉄道の駅だから案内表示くらいあるだろう」と思い表示を探しながら通路を進んでいると、途中からもうホテルの中に入ってしまったような雰囲気が。
近くの人に尋ねると、その少し手前に出口があるとのことでした。
引き返して探してみると、確かに扉はありました。が、まるで「非常階段」に通じているかのような地味な扉。
案内表示も扉の横に小さな立て看板がちょこんと置いてあるだけ。とても分かりにくいです。
ドアの外に出ると、そこは街灯もない真っ暗な陸橋。人もほとんど歩いていません。
「襲われたら危ないな」と思いながら、向かい側から来る人を警戒しながら歩きます。
陸橋を歩いていると真下に線路があり、慌てて振り返って案内表示を見てみると、どうもその手前にあった階段が駅への通路になっているようでした。
階段を降りてみるとそこはもう駅のプラットホーム。改札口などありません。
素朴な感じの駅です。
朝5時40分。まだ薄暗いのに、意外と多くの人が列車を待っています。
駅の真ん中。駅名の表示が鮮やかに飾られていました。
ホームに立つと正面に空港直結のホテル「アマリ」の看板が。
先ほど間違えて入ってしまいそうになったホテルは、空港から幹線道路と鉄道を挟んだ向かい側にありました。
近くに腰掛けていたおじさんに教えてもらい、駅の奥にある窓口で切符を買います。自動券売機などはありません。「クルンテープ」と駅名だけ伝えると映画のチケットのような切符を渡してくれました。
運賃は普通列車で5バーツ(約17円)。激安です(列車や座席の種類により金額は異なります)。
50分ほどでバンコク駅に着くとのこと。
列車内の様子
6時頃、列車がホームに入ってきました。
車両によって等級が違うのかどうかもよく分からず、とりあえず庶民的そうな車両を探し、並んでいる人の後ろについてステップを2、3段上がって乗り込みます。
こんなに早い時間なのに座席はほぼすべて埋まっており、空席を探して一番後ろの車両まで歩いてみましたが席が空いておらず、しばらくは立ったままの乗車となりました。
座席は日本のローカル鉄道のような4人掛けの向かい合わせの席で、背もたれが垂直になっている、あれです (この写真は乗ってからしばらく時間が経って、空いてきたときのものです)。
乗客はたまに観光客らしき人もいましたが、通勤、通学で使っているのか多くは地元の人のようです。
バンコクの「日常」を感じる
乗車した列車はバンコク駅まで路面を走り続けます。
朝の6時台。窓から見える建物に朝日が反射していました。
もちろん屋根があってプラットホームのある駅も多いのですが、
なかには屋根もなくプラットホームらしきものがあるだけで、駅なのかどうかが分かりにくい駅もありました。
しかも駅の横でごはん屋さんなどの露店が出ていたりもしましたので、余計に分かりにくいです。
窓からはバンコクの「日常」が見えます。
バンコクも、中心部を離れると大都市の雰囲気からは少し異なる風景もありました。
線路のすぐそばに、地面の土が掘り上げられてほったらかしにされたような、工事現場か何かよく分からないような場所がところどころに見られます。
その向こう側には時おり、トタンと古びた木材だけで建てられたような家々が立ち並んでいます。
大都市バンコクとはいえ、まだまださまざまな形の生活があります。
ときどき反対方向の列車がすれ違います。
けっこう派手な色の列車です。
列車は途中、駅でもないところでも何度か停止しました。
渋滞するわけではないと思うのですが、ときには数分と、意外と長く停止することもありました。
バンコク駅(クルンテープ駅)に到着
50分ほどで到着するところを30分くらいオーバーして、結局1時間20分くらいかかりました。
乗り込む際にはまったく余裕がなく、どんな列車かを見ることができませんでした。
ホームに降りあたらめて乗車した列車を見てみると、途中ですれ違ったのと同じような派手めのデザインです。
この駅からチェンマイやノンカーイなどいろんな方面への列車が出ているだけあり、ホームが何本もあります。
乗車した列車の先頭車両。これで列車を引っ張っていたのですね。
こちらがホームへの入り口。重厚なつくりの正面玄関です。
中心部には、バンコク駅開業時に在位していたラーマ5世の肖像画が掲げられ、その横には現国王ラーマ10世の肖像画が置かれていました。
切符売り場と行き先案内板です。
ここにも自動券売機はなく、チケットは窓口での販売のみでした。
そしてバンコク駅の正面入り口。
ターミナル(終着駅)らしく、どっしりとした構えです。
終えんを迎えるバンコク駅
2016年に開設100年を迎えた歴史あるバンコク駅も、近い将来その役割を終える予定となっています。
というのもタイでは現在、タイ国鉄道による高架建設計画が進められています。
全国各地に向かう長距離列車の玄関口を、将来的にバンコク駅から少し北の方にある「バーンスー駅」に移す計画です(乗っている列車からも、駅や線路の高架工事がところどころで行われているのが見えました)。
上記でご紹介したバンコク駅舎も、列車の発着拠点から博物館に変わってしまうとのこと。ちょっと残念ですね。
ですので、バンコク駅まで走る列車に乗れるのはまさに今のうちです。
ドンムアン空港からバンコク中心部まで、いろいろな「バンコク」を感じながら情緒あふれる列車の旅をしてみるのもいいかもしれませんよ。